近年、技術の発達と様々なアイデアにより、ドローンを利用した産業やビジネスが見られるようになってきました。
ドローンとは「人が乗ることができない、遠隔操作、又は自動操縦により飛行する事ができる重量200グラム以上の物を無人航空機(ドローン)」のことです。
設備点検や災害救助、生態調査、報道、レース、測量、医療、運送と様々な分野で活躍を見せるドローンですが、そのドローンを使用した業務を行うために、又は飛行させるためには何か資格や免許が必要になるのでしょうか。
今はまだ、ドローンを使用していることそのものが真新しく感じられますが、次第にドローンを使用したビジネスが日常の中で当たり前に見られる時代が来るかもしれません。
本記事では、ドローンを使用したビジネスを考えている方や業務の効率化を考えている方に、「ドローンを用いた業務に資格や許可が必要なのか」「ドローンに関連する資格にどういった物があるのか」や数あるドローンの資格の中から何を取得すれば良いのかを徹底解説します。
国土交通省認定の資格とは?
出典:国土交通省ホームページ
結論から申し上げますと、ドローンの操縦に資格は必要ありません。
資格を取得していないとドローンを飛ばせないというわけではありません。ですが、国土交通省から認定を受けているドローンに関連する資格や免許制度などの策定が実施されています。
ドローンを飛ばすこと自体に資格は必要ありませんが、ドローンを何処でも飛ばして良いという訳ではありません。
ドローンを飛ばすためには、航空局に改正航空法で定められている飛行禁止区域での飛行などの解除申請する必要があります。
ドローンの資格を持っていると、この申請の手続きを簡略化できるというメリットがあります。
これらの資格は「ドローンスクール」を受講修了することで取得できます。
ドローンスクールで取得できる資格は、講習を受け、試験や実技を終了した際に発行される資格や修了証のことを指しています。
国土交通省認定の資格とは、国土交通省に登録されている講習団体が運営するドローンスクールで行われる「10時間以上の飛行」を含めた最低限の技能の習得やドローンを運用する上で必要となる法律を含めた知識が学べる座学を修了することで得られる資格を指します。
国土交通省の認定を受けている資格であれば、どの資格であっても申請手続きを簡略化できます。名称の違いはありますが、証する能力に大きな違いはありません。
ですが資格によって、実技を行わず、筆記試験だけで取得できるスクールから、産業利用に特化したスクール、運転技術だけではなく管理運行に強いスクールなどがありますので、目的に合ったスクールを選ぶのが理想的です。
国土交通省認定のドローン講習受講で取れる民間資格一覧
こちらの表では国土交通省認定のドローン講習で取れる民間資格一覧と運営団体を紹介します。
運営団体名 | 取得可能資格名称 |
DPA(一般社団法人 ドローン操縦士協会) | 操縦資格・インストラクター資格 |
DJI | スペシャリストとしての認定証 |
JUIDA(一般社団法人 日本UAS産業復興協議会) | 無人航空機操縦技術証明証 |
IAU(国際無人航空機協議会) | 無人航空機安全運航管理者責任者認定 |
ドローン検定協会 | 無人航空機に関する飛行履歴・知識・能力を有することの証明書 |
それぞれの運営団体が発行している資格を表にしました。
それぞれの運営団体の簡単な紹介と取得できる資格を、下記で詳しく紹介します。
DPA認定資格
出典:DPA
DPA(一般社団法人 ドローン操縦士協会)とは、ドローン航空の安全飛行文化の構築と環境・衛生・人命救助・警備各分野とドローン航空の発展との融合・調和を図ることを活動軌道方針としている団体です。
DPAの主な活動内容は、次の通りです。
・ドローン操縦士の技術認定ライセンスの発行
・ドローン操縦技術向上のための研修・教育
・ドローン事業会社及びその関連団体の個別・地域別研究会、講演会などの開催
・各国へのドローン操縦士の派遣及び各国からの研修受け入れ
・ドローン操縦技術の研究並びにその成果の発表
・刊行物の発行などの広報活動
・ドローン事業会社の海外事業展開の支援
・会員相互の交流・親睦の発展
DPAでは、ドローンの飛行に必要となる基礎知識と基本技術を認定する「操縦士資格」とドローンの実施を講習するために必要な技能と座学、実施を講習するために必要な知識を有していることを認定する「インストラクター資格」を発行しています。
資格取得のための流れとしてDPAが定めたドローン操縦士の為の技術認定基準に合格したDPA認定高で適正確認、講座、試験を受けます。
試験までが終了するとDPAに修了者情報が送られ、技能会員登録を行います。
その後オンライン動画による講座を受講します。
上記の全てが終了するとDPAから資格認定の連絡が届き、認定証が発行されます。
DJI認定資格
出典:DJI
DJIとは中国広東省深圳にあるドローン及びその関連機器の製造会社です。英語名、Da-Jiang Innovations Science and Technology Co. Ltdの略称になります。
ドローンメーカーとしては大手に位置し、主な事業としてドローンの製造とハンドヘルドジンバルシステム・アクションカメラ、教育用ロボット製造などが挙げられます。
DIJでは、「DIJ CAMP」と呼ばれるドローンを安全に正しく使用できる操縦者を認定する企業向けのプログラムを開催しています。
このDIJ CAMPに参加して試験に合格することで、「DIJ CAMPスペシャリスト認定証」が発行されます。
DIJ CAMPスペシャリストは一定の飛行経験があり、ドローンの飛行業務に従事できると認定された資格になります。
他の資格にない特徴として、この資格があるとDIJの取り扱う「DJI賠償責任保険の料金が割引」されます。
DIJスペシャリストの資格取得をスタートに、飛行操縦経験時間が増えるごとに、インストラクターからマスターへと資格のレベルが上がっていきます。
JUIDA認定資格
出典:JUIDA
JUIDA(一般社団法人 日本UAS産業復興協議会)とはドローンの産業発展とその市場における「環境整備」「人材育成」を目的とした団体です。
JUIDAの主な活動内容は、次の通りです。
・「Japan Drone Expo」というドローン展示会の開催
・ドローン専用マップのアプリ配信
・ドローンスクールを通した人材育成と認定証発行
JUIDAによって発行される資格は、ドローンを安全に飛行させるための知識と操縦技術を有する者の認証として「無人航空機安全運行管理者証明証」が発行されます。
資格の取得方法はJUIDA認定スクールにて、定められた科目を修了後、JUIDAが定める申請手続きをしていただくと、「無人航空機操縦技能証明書」が交付される流れになります。
無人航空機操縦技能証明書を取得した後に、飛行業務の経験がある方を対象に、無人航空機の安全運行管理に関する知識を習得することで「無人航空機安全運行管理者証明書」の交付を受けることができるようになります。
無人航空機操縦技能証明書は無人航空機を安全に飛行させるための知識と技能を有する者として見られる能力証明証となり、「無人航空機安全運行管理者証明書」は無人航空機に関わる十分な安全と法律の知識を有している者であると見られる能力証明となります。
こちらの資格は、主にドローンを使用した現場の管理者として求められる資格となります。
IAU認定資格
出典:IAU
IAU(国際無人航空機協議会)とはドローンに関する最先端技術の発展と普及やその技術の公正な利用を促進するための団体です。
IAUの主な事業活動は、以下の通りです。
・ドローン操縦士及び安全運行管理者の技術認定及びライセンスの発行
・ドローンに関する人材育成
・ドローン関連のアプリ開発
・産業用ドローンのコンサルティング
・ドローンに関する研究
・会員の相互交流
IAUでは無人航空機を安全に飛行させるための技術と知識を有する者の認証として「無人航空機操縦技能認証」を交付しています。
無人航空機操縦技能認証を取得した後に、飛行業務の経験を有する方を対象に、無人航空機の安全管理に関する基本知識とリスク管理を行える者という資格として「無人航空機安全運行管理責任者認証」の交付を受けることも可能です。
ドローン検定協会認定資格
出典:ドローン検定協会
ドローン検定協会とはドローンを適切に普及していくための、操縦士の技術、技量の発展を図り、航空の安全確保につとめ、ドローン技術、知識の普及を行うことを目的とする団体です。
ドローン検定協会で取得できる資格は「無人航空機に関する飛行履歴・知識・能力を有することの証明書」になります。
こちらの資格は上記の団体で発行される資格と異なり実技を行わず、筆記のみで資格が取得できます。
ドローン検定の取得によるメリットとして。技能・知識の証明になる他に、協会と提携している団体の各種講習の受講資格が得られる点や講習の座学が免除される点が挙げられます。
そのほかにもドローン検定オリジナルグッズを購入することができるようになります。
そのほかドローンに関連する資格
ドローンに関する資格としては上記の団体が発行する「技能・知識を習得していること証明する」資格の他に、一定の条件でドローンを運用する場合、取得しておかなくてはいけない資格があります。
これらの資格は上記の資格のように、取得することでメリットがある資格というよりは、運用するのであれば取得しておいた方が有利になる資格になるので、条件に当てはまるドローンを使用する場合は資格の取得を検討してください。
第三級陸上特殊無線技士
陸上特殊無線技士とは、総務省で定められた無線従事者資格の一つです。
第三級陸上特殊無線技士の操作範囲となるのは、次の通りです。
1.空中線電力50ワット以下の無線設備で、25.010キロヘルツから960メガヘルツまでの周波数の電波を使用するもの
2.空中線電力100ワット以下の無線設備で1.215メガヘルツ以上の周波数の電波を使用するもの
では、この資格がなぜドローンの資格として必要になるのか。
ドローンを飛ばす際には電波を使用してドローンを飛行させます。その電波に関する法律が、2016年8月に電波法が改正されました。その内容として「ドローンによる5.7ギガヘルツ帯の使用が可能」とされることで、この新たに設定された周波数帯でドローンを運用する場合には、第三陸上特殊無線技士の資格が必要になったのです。
ドローンを趣味で飛行させる等であれば必須の資格ではありませんが、ドローン専用の周波数帯を使って本格的な飛行を想定している方には、この資格が必要になります。
農薬を散布す小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度
農業用ドローンを使用して農薬散布を行う場合、認定団体からの認定が必要です。
「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」において、農業用ドローンを使用する操縦士について以下の条件が設けられています。
「操縦士は空中散布に用いられる機種の操縦技術に習熟しており、かつ無人航空機を用いた農薬等の散布に関する技術及び無人航空機の安全な飛行に関する知識を習得している物として登録認定機関の認定を受けたものであること。」という条件が課されています。
つまり農業用ドローンで農薬散布を行うためには、専門的な技術と知識を有した「認定操縦士」であることが条件付けられています。
この認定操縦士としての資格を得るには、登録認定機関である「一般社団法人 農林水産航空協会」が指定する教習を受講する必要があります。
受講後、産業用マルチローターオペレーター教習修了者認定推薦状の交付を受け、推薦状を農林水産航空協会へ提出することで操縦士として認定されます。
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